「庭には2羽ニワトリがいるっ!庭には2羽ニワトリがいるっ!庭にはニッ」
ワニのような大きなあくびをしながら私は埴輪の目覚まし時計を叩いた。
正確にはニワトリの埴輪の時計か。
もっと厳密にはハニワニワトリの埴輪の時計であるが。
ハニワニワトリは埴輪に似た姿をしたニワトリで、現在日本には2羽だけしか生息しておらず、新潟の動物園で保護されている。
そんな生物の存在などにわかには信じられないが、昔はありふれた存在だったらしく、私が幼いころ新潟の親戚の家に遊びに行った時には、庭で2羽のハニワニワトリを飼っていた。
ただハニワニワトリがあまりにも埴輪に似ていたため、私はそれを埴輪と勘違いして無視していた。
で、この目覚まし時計はその新潟の親戚で埴輪職人の叔父が作ったもので、ハニワニワトリの形をした埴輪に時計の機能を付けたものである。
もともと埴輪に似ているニワトリの埴輪なので、結局埴輪の埴輪を作っていることとほとんど変わらない。
この一連の説明は、口で言ってもニワカ者にはにわかには理解できないようだが、私もニワカ者にはにわかには理解できないだろうと思って説明しているので別に良い。
そんな目覚ましの話はほどほどにして、そろそろ私は友人と会う支度に取り掛かろう。
友人の名は丹羽だ。
丹羽は、家の庭にワニをたくさん飼っている。
私はよく丹羽の家に遊びに行くのだが、庭に行くと丹羽のワニは輪になって歓迎してくれる。
そして、丹羽はいつも煮ワニをご馳走してくれる。丹羽家の庭で輪になるワニに囲まれながら食べる煮ワニは格別である。(余談だが、ワニは煮ワニは食べない。)
先日、丹羽の家を訪れた時には、丹羽が昔、ハニワニワトリを煮たもの、つまり煮ハニワニワトリを食べたことがあるという話をされた。
今や絶滅を危惧されているハニワニワトリは煮ることはおろか、食べること自体禁止されているため、貴重な経験談である。(私は埴輪に似ているニワトリを煮て食べることにそもそも気乗りしないのでうらやましいとは思わないが。)
丹羽によると、煮ハニワニワトリは煮ワニと味が似ているらしい。「生は似てないんだよ。生だから煮てないのは当然なんだけど。でも、煮ると似るんだよ。」と得意気に話していた。
「庭の埴輪には歯はないのには、母の埴ワッ」
丹羽からの電話の着信音である。最後まで聞かせることができず申し訳ない。
丹羽からの電話は珍しい。スケジュールの変更だろうか。
「この前ハニワニワトリの話しただろ?あの後、調べたらハニワワニもいたんだよ。香川にうじゃうじゃ。だから、たくさん捕まえてきちゃった。うちのハニワワニだからニワハニワワニだよ。今日は煮ニワハニワワニをふるまッ」
大した要件ではなさそうだったので切った。
改めて携帯を確認するとメールが1件入っていた。先日丹羽と一緒に居酒屋に居たときに知り合った中国人からだ。彼も今日、丹羽の家に来ることになっていたが、もうすでに到着しているようだ。
丹羽の庭には今、丹羽と李がいる。
さて、そろそろ私も出発しよう。
この話は2話には続かない。

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